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読みもの

名筆を集めた人びと

この字を、王羲之ならどう書いたか。顔真卿なら、懐素なら。その答えを一冊にまとめたのが書体字典です。千年のあいだ、学者や役人たちが碑や法帖から字をひとつずつ写し取り、書き手の名を添えて並べてきました。その多くは、名前しか残っていません。このページは、彼らの仕事をたどり、いま誰でも自由に読める字典を紹介します。

人名の下線は、ウィキペディアの記事へのリンクです(ない人もいます)。

千年の仕事

皇帝が名筆を集め、学者がそれを一字ずつに切り分けた。書体字典は、この二つの仕事から生まれました。

十世紀
郭忠恕『汗簡』古い字形を集め、一字ごとに出典を書き添えた。「字形と、その出所」という組み方の始まりです。
992年
王著『淳化閣帖』十巻(宋・太宗の命)宮中の名筆を版木に刻ませた、最初の大きな法帖。半分は王羲之・王献之の父子にあてられ、のちの字典の王羲之の多くはここから来ています。
1044年
夏竦『古文四聲韻』郭忠恕の方法を受け継ぎ、韻から引けるようにした。
1197年
婁機『漢隸字源』(1133–1212)漢の碑309と魏晋の碑31に番号を振り、隷書の一字一字に碑の番号を添えた。楷書の見出しの下に古い字形を並べる、いまの字典と同じ組み方です。
十三世紀初め
張天錫『草書韻會』五巻(金)漢の史游・張芝から金の時代まで、二百五十人あまりの草書を韻ごとに集めた。序は趙秉文(1159–1232)。日本でも1651年に京都で刊行されています。
1708年
孫岳頒・王原祁ほか『佩文齋書畫譜』百巻(清・康熙帝の命)宮中の書物1,844種から書画の記録を集めた。うち二十三巻が書家の伝記。字形ではなく、書き手たちの記憶を残しました。
1718年
顧藹吉『隸辨』碑の隷書を集め、誤った形や俗な形にも注を加えた。
1721年
岡谷義端『草露貫珠拾遺』江戸の草書字典『草露貫珠』の補い。明治・大正に増補され、1913年に『草書大字典』となりました。
1787年
石梁『草字彙』十二巻梅膺祚『字彙』の214部首にしたがって草書を並べた、もっとも広く使われた草書字典。これほど読まれながら、編者の生涯はほとんど知られていません。
1833年
関克明 書・関思亮 編『行書類纂』十二巻江戸の行書字典。
1881年
高田忠周(竹山、1861–1946)『行草字彙』二十歳の仕事。のちに古文字研究を代表する学者となり、『五體字類』の監修もつとめました。
1898–1904年
前田黙鳳(1853–1918)『五体字書』本屋の手代から書家へ。清に渡って金石学を学び、法帖を世に広めた人です。
1911年
松田舒『五体字鑑』十二巻篆・隷・楷・行・草を一字ごとに並べ、ひとつひとつの字形に書き手の名を記した。
1916年
法書会『五體字類』(西東書房)題字は日下部鳴鶴(1838–1922)。百年を越えて、いまも版を重ねています。
1940年
野本白雲『書体大字典』十二巻(平凡社)ひとつの字に三十近い字形を集めた大きな字典。

いま自由に読める字典

国立国会図書館が「保護期間満了」とした資料です。申し込みなしに使えます。出典は「国立国会図書館デジタルコレクション」と記してください。図版を押すと、その頁が開きます。

五体字鑑の頁(曹・曼・曾)

五体字鑑1911年、十二巻。五体、すべての字形に書き手の名。もっとも見やすい一冊。

草書大字典の頁(名・后・吐)

草書大字典(草露貫珠)1913年、上下二巻。草書のみ。字形ごとに書き手の名。

袖珍五体字類の頁(委・姿・姪)

袖珍五体字類1916年。『五體字類』の最初の版、小型本。書き手は一字の略号(右=王羲之、米=米芾、素=懐素など)。

書体大字典の頁(丁)

書体大字典1940年、十二巻。字形の数がもっとも多い。書き手の名は一部のみ。

草字彙の頁(卻・厄・原)

草字彙1869年の翻刻。木版。書き手の名は略号。

真隷篆行草大辞典の頁

真隷篆行草大辞典1917年。五体、書き手の名は略号。紙面は細かい。

行書類纂の頁

行書類纂1833年、十二巻。行書。カラーの画像。

名筆の原本

國立故宮博物院 Open Data(台北)書の作品5,763件。中解像度の画像は CC BY 4.0、申し込みなし・用途の制限なしで使えます。
书格古典籍と名品の高精細な複製(自敘帖、祭姪文稿、寒食帖、漢隸字源、隸辨など)。

字を調べるサイト

引くには便利ですが、許諾の記載はありません。見るためのサイトです。

书法字典一字から、十一の書体で。書家の紹介も。
书法字典网字から、書家から。
汉典书法辞書「汉典」の書の部。
以观书法金文・簡牘・印も含む、四百万を越える字形。
书法空间作品と拓本を時代順に。一字の前後を見るために。
異體字字典(台湾・教育部)ひとつの字の異体と、その出典。
字統网古い字形と異体のつながり。
漢語多功能字庫(香港中文大学)甲骨文から小篆まで、字形の移り変わりと字の意味。
ウィクショナリー日本語版字源と意味、日本語・中国語・朝鮮語での読み。文章は CC BY-SA。

研究とデータ

史的文字データベース連携検索システム奈良文化財研究所を中心に、東京大学史料編纂所、国文学研究資料館、国立国語研究所、京都大学人文科学研究所、中央研究院(台湾)などが結んだ横断検索。木簡、古文書、拓本の字形を一字から。
MCCD書き手142人、約33万字の字形データ(華南理工大学)。非商用の研究のみ。
UniCalli94人の書き手の筆致で、五字の一行を書く生成モデル。試せるページあり。非商用のみ。

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